2012年2月19日日曜日

shirts

ひとりひとりに合ったシャツを1枚ずつ仕立てる。
実は、私が布の仕事をはじめたきっかけが、この想いからだった。

なぜ、シャツ?と思うかもしれない。
どんな服でも、同じデザインのものが、全員に均等に似合うことはないけれど、
シャツというのは、それぞれに似合う1枚がきっとある。
特に、ハンドメイドのシャツは、立体的に体に沿うように仕立てていくので
シルエットもさることながら、
袖を通した時の感触も全く異なるし、不思議と温かみのようなものがあるのだ。

20代のはじめの頃、近所にある大きなショッピングモールに
2畳半ぐらいのスペースで、真っ白いペンキで塗られた壁とウッドデッキの床で
シャツだけを売る、という店が突如現れた。
真っ白い色々な形のハンドメイドのコットンシャツ。
色は、見事に白しかなかった。
シャツを買うと、同じ素材の卵型の小さなBAGに入れて渡してくれる。
聞けば、売れるたび、奥でパターンと縫製を担当する女の子が、
一枚一枚丁寧に作って補充するのだという。
ショッピングモールで、この潔いスタイル、ということにも驚いたけれど、
なにより、
そのスタッフのメンバーたちが、
ピカピカした笑顔で楽しそうにモノづくりをしている姿が印象的だった。
私は、その店でよくシャツを買っていた。
心地よい感触の、素肌にすっとなじむシャツ。
洗いたてのくしゅっとした感触そのままで、シャツを着こなすかわいらしさも、
そのお店で教えてもらったように思う。

そのお店をきっかけに、私にとってシャツが欠かせない存在になった。
リラックスしたいお休みの日でも、きりっと気持を引き締めて仕事場に向かう時も、
自分に合った大切なシャツ、という存在があれば大丈夫。

そういえば、あのマーガレットハウエルも、
シャツを作ることからブランドが始まったと、
とある雑誌の記事で目にしたことがある。
イギリスの様々なアンティークのメンズシャツを手にするたび、
これを形にしなければ、
と自宅のキッチンをアトリエにしてはじめたのがきっかけだったとか。

シャツ、というのはそれだけ魅力に溢れ、
作る側にとっても、着る人にとっても
たくさんの可能性を秘めているものだと思うのだ。

今回、ようやく、シャツを自分で仕立てることができた。
自分自身でmanuokuというブランドを立ち上げたときから、
お洋服のほとんどは、
いままで友人にパターンと縫製をお願いしていたのだけれど、
シャツは、全て自分で仕立てる、と決めていた。

友人に教わった通り、襟、台襟、カフス、肩ヨーク、前立て・・・
といった様々な部位を部分別に修練を重ねる。
平面を立体的に縫っていく作業は、全神経を使わないとできないし、
1ミリでもずれてしまうと、シルエットにすべて響いてしまう。
何度も縫ってはほどいてを繰り返し、パターンをミリ単位で調整していく。
それでも、集中して続けていくうちに、
「ミシンが走っている」感覚が分かってきて、
そういう時は、きれいなラインに仕立てることができる。

スタンダードでシンプルな1枚。
友人と新しくはじめたブランドmoani、第1歩の1枚。


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